いちじいちぶつほけきょうじょぼん一字一仏法華経序品
区分 | 美術工芸品 | 時代 | 平安時代 |
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指定内容・指定日 | 国宝(書跡)・西暦1953.11.14 | ||
所有者 | 善通寺 | 所在地 | 香川県善通寺市善通寺町3-3-1 |
「法華経」は、中国から日本に伝わった仏教の経典(テキスト)で、8巻28品で構成されます。この法華経序品(じょぼん)は、黄蘗色(きはだいろ)に染めた上質な料紙に、その経文を一行に10文字ずつ記し、次の行には経の一文字にたいして仏の姿を一つずつ描いています。このように経文と仏像を一行おきにあらわした経は「経仏交書経(きょうぶつこうしょきょう)」と呼ばれ、中国の敦煌(とんこう)出土経にみられるのみで、日本国内での類例は確認されていません。
経文はやや古様さをもつ楷書体で書かれ、仏像は朱色で下描きし、彩色した後にその輪郭を墨で描いています。仏は、みな朱色の衣をまとい、白緑の蓮の花上にすわり、背後には白色のまるい光をあらわしていますが、それぞれ表情や姿勢は一様ではなく、個性的で自由なおおらかさにあふれています。
元禄9年(1696)の『霊仏宝物目録』では、経文を弘法大師空海が書写し、仏を母の玉寄姫(たまよりひめ)が描いたといいますが、その文字の様相から平安時代中期の写経とみられています。冒頭の見返しは後世のものですが、紺色に染めた紙に金泥(きんでい)で「善通寺御影(みえい)」とよばれる修行中の弘法大師の姿が描かれ、善通寺と大師のゆかり深い物語の場面が描かれています。